ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
ふ…と笑うと、優しく頬を撫でられた。
泣くのが落ち着いてきた頃、仕切り直そうと彼が言った。



「……何に乗るんだ?」


さっきの質問を繰り返した。


「この間の約束果たして」


立ち上がろうとする人に声をかける。



「じゃあ、行こう」


腕を引っ張る。


「うん…」


もう『離して』は言わない。



「あんまり早く歩けない」


足の痛みを思い出した。


「大丈夫。お姫様抱っこで行く!」


「えっ…あ、それは、ちょっと………きゃっ!」


軽々と抱え上げられた。



「や、ヤダ。は、恥ずかしい…!」


しっかりと掴まって肩の上に顔を埋めた。


「そのまましがみ付いとけ」


笑いながら歩き出す。



「ケイ……」


顔を寄せてきた彼が、優しい声で名前を呼んだ。



「今度、キャリコを見に来い」


それは、家族に会わせるという意味?


「ははは、はい……」


吃りながら返事した。


「いい返事だ」と笑った人の隣で、いつだって笑える自分になりたいーー。




花火大会が始まった頃、観覧車に乗り込んだ。
夜空に広がってく花火は、どれも色鮮やかで美しい。


「キレイ…」


うっとりとしながら見つめる。



「ケイ……」


側にいる人が近づいてきた。



「大輔さん……」


名前を呼びながら目を伏せる。


リンゴ飴よりも甘くて蕩けるようなキスを交わした。


何度も名前を呼び合いながら、濃密な時間が過ぎていったーーー。





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