ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
だったら怒鳴らないでよ。
こっちは1週間、針の筵の上に座ってるような気分だったのに。
貴方にはわかんないかもしれないけど、緊張の連続だったんだから。


「………っ」


ぐっと込み上げてくるものを感じた。
でも、泣くのはみっともない。


「……あの」


謝るなと言われたから謝ったりはできない。
だからと言って、取り繕う言葉の一つも出てこない。



「……どこ、行くの」


ようやく出てきた言葉。
さっき聞きたかったこととは別のこと。


「羅門の店。昼飯食べに行くと言ってる」


ムッとした表情のままで答えた。
それを聞いて少しだけホッとする。


(なんだ。友達って羅門さんか)


ダチなんて言い方するから余計なことまで考えた。
緊張した中で時間を過ごしてたのに、また新しい人間関係に揉まれるのかと思った。


「そこで仲間を紹介してやる。見た目が派手な奴らだけど、中身は悪くねぇから」

(えっ!?)


やっぱり新しい人と関われと言うの。
緊張の糸が解れたと思った途端に張り詰めてく空気。


「行くぞ」


(や、ヤダッ!)


声にも出せず、引っ張られるようにしながら前へと歩み出した。
出たこともない舞台に立つようで、気持ちだけが後へと置いていかれた。



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