ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
(何これ。近頃の夜店ってこんな美味しいものが出るの!?)


値段の割に味がいまいちなイメージしかなかった。
でも、この焼き鳥は肉も大きくて、味もかなり美味しい。

モグモグと噛んでるうちにあっという間に1本を食べきった。
豚バラの方も食べてみようと、塩ダレのついた串を手にした。


脂身の少ない豚バラ肉は厚めに切って焼かれてある。
ほんのりと焦げ目がついてて美味しそう。
食べ応えありそうな肉を眺めて、先端からかぶりと噛んだ。



「んんっ!」


何、このお肉。
噛むたびに口の中に肉汁が溢れ出す。

安っぽい豚肉の味じゃない。
上品な甘さがある。


串を見たまま噛むのをやめた。
ゴクン…と飲み込んだ後も口の中に甘みが広がってる。



「旨いだろ」


ヤンキー男の声がして振り返った。
両肘をついた男の視線が、私の方に注がれてる。



「うん」


狐につままれた様な気持ち。
おとぎ話の世界ではないが、ウラシマも同じことを考えたのではないか……。


「いい材料使ってるからな。鶏も豚も国産のブランド品だ」


産地や種類を教えてくれる。
その話を聞きながら採算は取れるのだろうか…と考えた。


(あっ、そうか。きっと値段が高いんだ!)


1本500円は軽い?
でも、そうすると他の料理は頼めないはず。



「あの、ねぇ……」


そう言えばこの男の名前は何だったっけ。
じっと顔を見てると男の口元が緩んだ。


「ガキだな」


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