ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
『しっかり掴まっとけよ』


隣にいるヤンキー男が笑う。


『わ、わかってる!』


強気に言い返しながらも胸が弾む。

隣にいる男が王子様みたいに思えてしまう。
ヤンキーなのに紳士に見えてる。



(なんだか不思議な気分…)


光の中をグルグルと回転してるせいなんだろうか。
それとも2回分まとめて支払ったから休みもなく回り続けてるせい?



(あーなんか目が回ってきた…)


視点を前に向けると谷口がいて、じーっとそっちばかり見るのもおかしな気がして進行方向の先ばかりを見てた。

おかげでいつも以上に酔った感じで直ぐには降りれなくて。

馬の背中でじっとしてたら、あいつが乗った時みたいに抱きかかえて降ろしてくれたーーー。






(うわぁぁぁ……!)


思い出しただけでも赤面する。


あろう事か私、その時スゴくときめいてしまった。

連絡先も削除するつもりでいたのに、『また会おう』の言葉に頷いてしまった。


それから、『渡す物』と言われて返された下駄を見て、更にトキメキが加速していって……


……別れる時にされたキスを、抵抗もなく受け止めてしまったーーー





(バカだ、バカだ!私は大バカだっ!!)


ポカポカと頭を叩きたくなる衝動に駆られる。
何とか気持ちを奮い起こし、ベッドから抜け出して洗面所へ向かう。




「そうだよね。これがホンモノの私……」


< 67 / 209 >

この作品をシェア

pagetop