たとえばモラルに反したとしても
***
桐華のポケットの中でスマホが着信している。
しつこく鳴り続ける呼び出しを無視していた。
弓弦から逃げ出した桐華は一人で繁華街の少し外れにある公園のブランコに腰掛けていた。
夜になると風が冷たくて、もう秋が深まって来ていることを実感する。
僅かな草むらで虫の声がしている。
驚いた。
弓弦の行動にではない。
自分の行動に対して驚いていた。
あれほど拒絶するなんて自分でも予想外だった。
別にキスすることなんて何てことない。
好きじゃなくても、したいって言うならすればいい。
友達として嫌悪感さえなければ、別にキスだってその先だって構わない。
そんなに大事にするほどのものでもないと思うし、大事にしたからと言って、何が変わるわけでもないと思っていた。
誰かと手をつなぐのも、誰かとキスするのも、誰かと寝るのだって全然平気。
倫理観が薄いとか、そんなこと桐華には関係なかった。
それなのに……
それなのに、あんなに拒否するなんて、おかしい……
弓弦が嫌いな訳じゃない。
どちらかと言えば好きだ。
明るいところやしっかりとしたところ、背の高いところも整った顔立ちも、結構好きだ。
だからキスしたいって言われて、別にいいやと思ってきた。