妖あやし、恋は難し
第一章《結》

女子高生は陰陽師





「ここが柳邸…で、あってるのかなあ」


彼女は大きな門の前で小さくそう呟いた。

手元に握るのは上質な紙の、招待状のようなカード。

白地にブルーのラインが入った清楚な印象のセーラー服を身に纏った彼女は、何度かそのカードと表札を交互に見比べたのち、恐る恐るインターホンに手を伸ばし思い切るようにそれを押す。


ブー


豪邸には見合わない地味な音が鳴ったかと思うと、

『――はい、どちら様でしょうか』

ダンディーなおじさまの声が。

彼女は別に直接見られているわけでもないというのに、きゅっと姿勢を正してお辞儀をする。

「あっ!わたくし、柳 洸太郎様の依頼を受けてまいりました。
 一条 結(ゆい)と申します」

『――…失礼ですが、ご職業は?』

モニター越しに見えているのはセーラー服の女子高生だ。
そう尋ねられるのは当然だろう。

あまり口に出したくは無かったが、しょうがないかと諦めて彼女は覚悟を固める。


「申し遅れました、わたしは――
 【陰陽師】です」


そう

わたし、一条 結は現役の女子高生であり、同時に正真正銘の陰陽師なのである。

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