妖あやし、恋は難し

二度目のさようなら





「……んん…、あれ…ここ…?」


結はゆっくりと、上から降り注ぐ白い光を眩しそうに瞼を開けた。

そこに映るのは見知らぬ場所

真っ白な天井、真っ白なカーテン、つんとする独特のアルコール臭、横たわるのはふかふかのベッド。
まるで病室…、病室?

「ああっ!!仕事…!」

そこでようやく、結は、自分が仕事の最中に倒れてしまったことを思い出した。





「あら一条さん。気づいたのね」

「あ、…看護師長さん」


湊に殴られた頬の手当てをしてくれた看護師長がベッドを遮るカーテンの間から顔をのぞかせた。


「あ、あの…私…」

「病室で倒れたのよー。まったくあなたも災難ねえ、あの一家に巻き込まれて。よくケンカ騒ぎするのよー、何度も注意しているんだけどねえ。頬は殴られるし手の平は火傷してるし挙句倒れちゃうなんて…あなた厄日なんじゃない?」

「アハ、アハハハ…」

確かに災難かも、と結がカラ笑いしていると。

「ああ、でも、皇さんのところは逆に幸運に恵まれたわねえ」

と看護師長さんが点滴を代えながら呟いた。

「皇さんのとこの遥さん、不治の病で余命いくばくもないって事だったのに、劇的に病状が良くなったのよ」

先生たちもびっくりしてらっしゃたわーー。

看護師長のその言葉を聞いて、結は胸をなでおろした。

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