妖あやし、恋は難し

病床の組長さん





「――こちらです」

登坂が案内した先には、この日本家屋とミスマッチな部屋が。

結が見る限りそこは病室のように見えた。

真っ白なスライドドアを開けると一人の老人がベッドに横たわり、さまざまな医療器具に繋がれ眠っている。


「…我々の親父、黒木組の組長、黒木剛蔵です。もう何か月も寝たきりでございやす。必要最低限の会話は出来やすが…一日のほとんどは死んだように眠って過ごしているようです」



一条様

登坂は結に真剣な顔を向けて、縋るように話した。


「いくつもの病院にかかり、さまざまな治療を施しましたがまったく効果がありやせんでした。もはや神頼みしかないとあらゆる祈祷霊媒師にも除霊を頼みましたがどれも外れで…その時一条様のお噂を耳にしたのです。一年前、関東の岸科(きしな)会の幹部の命を救ったと」

ああ、そんなこともあったなあと結は懐かしむ。

あの時は今回以上に大変だった。こことは違い過激で有名な暴力団だったから。

思い出したくもない。


「お願い致しやす、一条様が最後の頼りなんでごぜえやす。組長を、親父を救ってくだせえ!!」

「『お願いしやす!!!』」


登坂に続き舎弟の皆さまが一斉にそう言って頭を下げたので結はビックリ。

固まりながら「は、はい…」となんとか返事を絞り出したのだった。

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