竜宮城に帰りたい。



「祐くんの気持ち…
わかるよ。」

「ほんま?」

「うん。私は…」


今、祐くんに私の悩みを打ち明けてどうなるんだろう。

せっかく祐くんが相談っぽいことしてくれてるのに、
自分の話をしだすってうざいかな…


「澪。」


祐くんがあまりにも優しい声で私を呼ぶから、
ドキッとして、思考が一時停止した。


「え…な、何…?」

「ええよ。話して。」

「……

うん…。
あのね、私も昔から気が弱くて、人とうまく接することができなくて、
引け目を感じて生きてきたよ。」


こういう話をする機会はほとんど経験したことがないから、
なんだか照れくさい。


「勉強も暇だったから少し得意なだけ。
運動音痴だから体育祭でもお荷物だよ。
好きな人ができても見てるだけ。
特別楽しかった思い出ってほとんどないんだ。
そんなつまんない人生で、つまんない人間になっちゃった。」


「つまんなくない。」



ずっと下を向いて話していたけれど、
祐くんが芯の通った声でそう言うから、
思わず顔を上げてしまった。



「つまんなくないよ、澪は。」


「そんなのお世辞…」


「お前は俺の高二の夏の思い出ん中に絶対欠かせん人間や。
俺の夏休みを勝手につまんなくすな。」


「っ…」


どうしよう。

泣きそう…

泣くな。
晴たちが帰ってくるし、祐くんも困る。


「祐くんは優しい…。
私ね…親友って言える友人がほとんどいないの。
でも、祐くんとはそうなれる気がする。
祐くんは…私にとっても欠かせない人だよ…」


「ありがとう。
なんかめっちゃ嬉しいわ。」



祐くんは少年のようにキラキラした笑顔で笑った。




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