竜宮城に帰りたい。



浦島太郎が玉手箱を開けたとき、
乙姫様はさぞかし安心しただろうな。


浦島太郎はちゃんと私を覚えていてくれた。

寂しいときに私を思い出してくれた。


老人になることでそれを確かめて、
安心する。




ホント、勝手。





**



「好きだよ」




そう言うと、晴は今まで痛いくらいに抱きしめていた両腕の力を抜いた。


それと同時に私も晴の背中に回していた腕をほどいた。




顔を見上げると、相変わらず寂しそうな目で険しい顔をしていた。



「晴?大丈夫?」


「…ごめん。」


「……」



何が…『ごめん』?



嫌な予感が脳裏をよぎる。



ホント、乙姫様はワガママだ。

残酷だ。



あなたが側にいてほしいと願うのなら、
彼はどこにも行かなかっただろうに。




「俺には…
瑞季がおるけん。」





あー、

いっぺん殴りたい、乙姫。







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