桜の花びら、舞い降りた
想いは時を越えて


圭吾さんは本当に来るだろうか。


私にとっては、ほんの数ヶ月前の約束。
でも、圭吾さんにとってみれば、何十年も前の約束になる。


覚えていないかもしれない。
忘れてしまっているかもしれない。


スノードロップが姿を消した四月十六日。

私たちはこの神社で会う約束を交わした。


木々の葉っぱがサラサラと音を立てる。
心地よい風に乗って、桜の花びらが私の周りを舞っていく。

初めてここへ来た日とは全く違う景色が広がっていた。
周りを真っ白に覆っていた雪は姿を消し、かわりに杉の葉の緑と桜の色で埋め尽くされている。

不意に遠くから足音が聞こえてきた。


……来た……?


自然に緊張が高まる。
大きく息を吐き出し、足音がした方にゆっくり振り返った。


「……圭吾さん? 嘘、どうして?」


私を見つけて、彼が立ち止まる。


「こんにちは」


優しく微笑む、あの笑顔。
私の前に現れたのは、数ヶ月前に別れたときのまんまの圭吾さんだった。

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