背番号6、最後の青春
大きな声で聞いてこなかったことに少し疑問をもったらしいが、すぐに理由を察したらしい。
「それなりに痛いけど大丈夫」
顔を近づけて小さな声でそう言ったあと、ボソッとありがとうと呟いた。
俺はあえてその言葉は聞かなかったものとして、弘也に合わせてゆっくりと歩き出す。
もともと余裕をもって登校していたためゆっくり歩いても遅刻はしないだろう。
弘也は意地を張ってスタスタと早く歩きたがるが、すぐに足が痛いと呟く。
だから、ゆっくり歩けばいいのにと笑う。
それに対してムスッとしながらも、すぐに笑顔になって笑い出す弘也。
そんなこんなでなんどか笑い合って、少しずつ学校が近付いてくる。
弘也の顔が曇ったのは、きっと気のせいではないだろう。
行きたくないというわけではないようだ。
多分、バレることを恐れているのだろう。