嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
頼もしい味方
朝目を覚ましたら、お兄ちゃんが隣で眠っていた。
その奥にはお父さがいて、私の隣にはお母さんがいた。
皆、気持ち良さそうに、幸せそうに寝ていた。

昨日は、久しぶりに家族4人で寝たんだ。
和室にお布団を敷いて、肩を並べて。
もう、遠い昔の事で。よく覚えていないけれど。
こんなに幸せな気持ちで眠りについたのは初めてだと思う。

まだこうやって眠っていた頃は私が物心がつく前だった。
お兄ちゃんと年が離れている事もあり、こうやって眠ったのは少ないけれど。
共働きだったからお父さんもお母さんも家にいなくて。
泣きじゃくる私をお兄ちゃんが抱きしめながら寝てくれた。
朝起きたら、もうお父さんもお母さんもいなくて。
あの頃は、本当に、いい思い出なんてひとつもない。


「んっ……」


ごろんと寝返りを打ったお兄ちゃん。
私の方に体を向けて、安心しきった様に目を閉じていた。
まるで子供の様な寝顔に胸が温かくなった。


「ありがとう……」


小さく呟いて、私は布団から抜け出した。
誰も起こさない様に静かに自分の部屋へと向かう。


「……」


いつもと同じ階段。
いつもと同じ廊下。

変わった所なんて何もないのに。
いやに気持ちが軽いんだ。


「家族、か」


口に出した瞬間、ジワリと胸に広がる熱いモノ。
今なら分かる。

これが“幸せ”だって。
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