嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
キミの隣
「お前たちは一体何を考えているんだ!!」


目の前で怒鳴るのは私たちの担任、佐藤先生だ。
職員室で、正輝と2人で怒られていた。

理由は勿論、授業をサボった事だ。

昨日、あれから結局6時間目もサボって皆が帰った頃に教室へと戻った。
正輝は用事があるとの事で校門で別れて、無事にそれぞれの家に帰った所までは良かったけれど。

今日学校に来て朝のHRが始まった瞬間に、『放課後職員室な』と満面な笑顔で処刑宣告をされた。
2人で逃げ出そうとしたけれど、佐藤先生の方が1枚上手で捕まってしまって今に至る。


「白石!」

「は、はい!」


ボーッとしていれば佐藤先生に強めに名前を呼ばれた。
驚きながらもきちんと返事をすれば大袈裟な程にタメ息を吐かれる。


「お前は成績は申し分ないのに、授業をサボるのが少し目立っているぞ!」

「は……はい……」


先生の言う通り、私はよく授業をサボっていたんだ。
皆の心の声から逃れたくて、醜い世界から抜け出したくて。
あの屋上に1人でいる事が多かった。
学校ではあそこだけが私の憩いの場だから。


「一ノ瀬!お前は転校初日にやらかすな!
最初くらい大人しく出来なかったのか!?」

「無理です」


キッパリと言う正輝。
隣でチラリと顔を盗み見れば真っ直ぐな視線が先生に向いていた。
その視線に押し負ける様に佐藤先生は私の方を向く。


「白石!お前は一ノ瀬と知り合いだろう!?
サボらない様に見張ってろ!」

「そ、それを私に言うんですか……」


私だってサボりの常習犯だ。
お目付け役にはならないだろう。
寧ろサボる回数が増えたりして。
それは容易に想像が出来てクスリと笑ってしまう。


「何を笑ってるんだお前は!!」


怒鳴る佐藤先生に苦笑いを浮かべれば、ふいに視線が交じり合ってしまう。
聞きたくない声が、ジワリと私の頭の中に染み込んでくる。
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