潮風とともに


「あ、波瑠起きた???貴方の奥さまから電話よ?」



「っえ、もしもしっっ!!!瑠碧????るあ!
これは違うっ、あの!」


私は波瑠の声を遮って慌てて電話を切った。


心臓がバクバクいっていて息が苦しい。



どうして???


どうして朝から女の人がいるの?

電話をでるの???




昨夜から一緒にいたとか……?


同じベッドで、眠ったの……???



違う。波瑠はそんなことしないよね???


鳴り続けるスマホをボーッと見つめながら


波瑠は違うと信じる気持ちと、



私はまた浮気されたのかという気持ちとが交差する


でも見た訳じゃない。


もしかしたら、朝何かの用事で波瑠の部屋に着た同僚がたまたま電話に出ただけかもしれない。




でもあの声…………あかりさん……???


間違いない。あの声はあかりさんだ。



私から赤ちゃんを奪っておいて、、、、




誰もあかりさんのその後を教えてくれないのに、

波瑠はあかりさんと会っているの???



どうして波瑠……

私とあなたの子どもを奪った女なのに……



私の心のなかがどす黒い靄で埋め尽くされる



どんどん息苦しくなっていく……



「っっ、はぁ…………行かないと……」


私は苦しい胸に手を充てて、駅までの道を急いだ。


ダメだ。遅刻。。。


駅について時計を見るともう、間に合わない時間になっていた。

それでも少しでも早く着くように足をすすめながら、彩花さんに遅れる事をメールする。




昨日、あんなに不安で泣いていた時に、


波瑠はあかりさんと一緒にいたのかもしれない



信じたいのに信じきれない。


私の弱い心が、強く信じることができない。



過去のトラウマと、赤ちゃんを奪われた事への虚無感が私の心を冷やしていく


不安定になっている原因は分かってる


赤ちゃんと波瑠……
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