恋する姫

廊下長いなぁ・・・

一歩、歩くたびに涙が込み上げる。

だってさ・・・晴貴が家の前にいたんだよ。

しかも、ちっちゃい女の子に後ろから抱きつかれていた。

いや、別に私は痛くも痒くないけどね。

「はぁ・・・」

ため息を一つ、ついてまた歩き出した。

その時

「・・・・!!ちょっ!!!!」

前からきた影に担がれ、もう一度自分の部屋に戻った。

「ちょっと!何をするの?!放しなさいっ!!」

目の前にある背中を叩いた。

「わかったよ」

低い声が部屋に響き、私の体は自分のベッドに放された。

「晴貴!何をするのよ?!」

大きな影の招待は、さっき女の子とイチャイチャしてた晴貴だった。

「別に」

「さっきの女の子とずっと一緒にいれば良かったのに」

私、絶対いやな女だよね。

さっきの女の子だって晴貴の婚約者だと思うんだ。

でも、なんだろう。

胸がモヤモヤするんだ。

苦しくて、張り裂けさけそうなの。

「聖羅・・・」

私の名前を呼んだ晴貴は少し悲しそうな表情をしていた。

「あの子はオレの婚約者なんだ」

知ってるよ――。

「でも、オレにはあの子の他に好きな人がいるんだ」

好きな人??

「それは・・・」

―コンコン

晴貴の言葉を遮るようにドアがノックされた。

―松さんかも。

「はい・・・」

そう言ってドアを少し開け、廊下にでて戸をしめた。

「聖羅嬢様。いかがなさいましたか??」

「いえ。なんでないです」

「嬢様は嘘をつくのが、下手なんですね」

私がえっ?と顔をあげると松さんは少し笑って、

「目が泳いでいます」

と言った。

あわてて顔を床に向けた。

< 24 / 35 >

この作品をシェア

pagetop