堕天使と呼ばれる女

極度の緊張感の中で訪れた院長室。



久々に院長と話をした後、直行の手に残ったのは、1つの見合い写真だった。


直行は、研究室へ戻る途中のロビーで、見合い写真を見てみる事にした。


ガラス張りでテラスのようになっている明るいロビー。

そこの椅子に腰掛け、一呼吸おいてから、お見合い写真をゆっくりと開いてみた。


そこには、色白で、優しそうな美人が居た。


どこか儚げで、それでいて朧気で、捕まえようとしても消えてしまいそうな…



でも、どうしても気になって仕方が無いと思わせる何かを、秘めていそうな女性だった。


写真を見ているだけで、吸い込まれてしまう気がしてしまい、直行は慌ててお見合い写真を閉じた。


そして、正気に戻る為にガラス越しに眩しい太陽を見上げた。

何故か、病院の中で1日の大半を過ごしていると、何が現実か分からなくなる時があるのだ…


ただひたすら、資料と格闘している毎日では、致し方ない事なのかもしれない。


でも、そんな直行なんてお構いなしに、毎日必ず日は沈み、朝日は昇るのだ。


だから、直行は太陽を見ると、何故か現実に戻れるような気がしていた。


唯一、正気に戻れるような…


とりあえず、写真を持ったまま、研究室へと足を向けた。

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