堕天使と呼ばれる女

コンコン!

スミレは右手にアイスコーヒーを載せたトレイを持ったまま、地下室のドアをノックした。

「はぁ~い。」

返事は、心ここにあらずな上に、欠伸が混ざっているようにも聞こえた。

「根詰めてるんじゃないの?」

ガチャッと扉を開けて部屋に入ったスミレは、そう言いながら、教授のデスクにアイスコーヒーを置いた。

「あっ、ありがとうございます。
 スミレさんってば、心配しすぎ…
 まだ何時間も経ってないですよ?」

そう苦笑しながら答えた時、ようやく星羅は顔を上げ、スミレの目を見た。

「まあ、これだけの資料を“お前なら解る!!”って、いきなり引き継がれても、確かに困るわよねぇ…

 ねえ、星羅!今から、和也くんを荷物持ちに、ちょっと買い出しに出てくるわ。」

これはつまり、

“今から一時的に防御力が下がるからね”

そういう合図…


「はい。」


静かにそう答えた星羅は、再び視線を資料へ戻し、スミレもそれを確認してから、地下室を後にした。


そして和也に声をかける。


「星羅には声をかけてきたわ。
 行きましょうか。」

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