涙色花火
結優奈side
“8月4日”
毎年のその日は、
みゆらが住んでいる街で花火大会が開催される。
海沿いにたくさんの出店が窮屈そうにならんで、
ふだんは真っ暗でしずかな夜の海なのに、
花火があがってあかるくなる。
テレビでとりあげられるほど
有名な花火大会だから、
県外からくるひとも多い。
小さいときから毎年、
みゆはそのお祭りがたのしみだった。
ふわふわのわたあめに、
ひんやりつめたいかき氷。
真っ赤なりんごあめを片手にみる、
カラフルな花火が大好きだった。
でもそれは、
毎年、大好きな翔陽ちゃんが
みゆのとなりにいるから。
いまから2年まえの、中学2年生の夏。
その年の花火大会も、
翔陽ちゃんと行く約束をしていた。
その年は、いままでの花火大会より、
とくべつな日になるはずだった───。