涙色花火
番外編

翔陽side




……あぁ、


今日もキミは泣いている。


海辺で、小さなからだをまるめてすわるみゆ。


みゆ、おねがいだから泣かないで。


その小さな背中をだきしめたい。


でも、空にいる俺にはそんなことできない……。


“みゆのせいじゃないよ”


この声すら、届かない……。


祭り会場にむかう途中、
大好きなみゆにはやく会いたくて
いそいでたんだ。


みゆからのメールに返事をしようと、
信号まちをしているあいだに
文章を作成していた。


信号が青になって、
俺はケータイを操作しながら走りだしたんだ。


そのとたん、
横からクラクションの音がきこえてきて、
俺のからだが宙を舞った。


痛ってぇ……。


俺、ちゃんと信号守ってたよな……?


そのままかたくてゴツゴツした
アスファルトの地面にたたきつけられた。


そこからの記憶がなくて、
気づいたらこんなところにいたんだ。


俺、いつのまに死んだんだよ。


そのあいだの記憶がないから、
死んだって実感がねぇんだ。


そりゃあ、
ケータイを見ながら走った俺もわるいけど、
青になったら確認とかしねぇで
ふつう渡っちまうじゃん。


みゆとはなしたいのに、
みゆをだきしめたいのに、

もう、それができない。


「そんな泣くなよ……」


どうすることもできなくて、それがくやしい。


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