空を祈る紙ヒコーキ

 ツイッターのことを訊こうとしたけど訊けなかった。あまり詮索して煙たがられたくなかった。そういうヤツじゃないって分かってるのに。訊いたら快く答えてくれると知っているのに。今さら遠慮するような間柄じゃないのに。……訊けなかった。

 質問の代わりに、部活のことを尋ねた。アイツは時々言葉を選んでいるかのような間を置き、ポツポツと部活のことを話した。

 部活で新しい友達が出来たこと。練習帰りには彼らと寄り道をしていること。毎日牛乳を1リットル飲んでいること。

 そんな当たり障りない話じゃなく、本当はもっと別のことを俺に話したがっていた。そう知ったのはだいぶ後になってからだった。

 訊いておけばよかった。たとえケンカになっても、うっとうしいと思われても、強引に訊けばよかった。

 何で最近ツイッターやってないの?

 たった一言、それが口に出来ていたら何か変わったかもしれない。


 アイツのためなら何でもできる。疑うことなく信じられる。そう思ってたし、アイツのいない今でもあの頃の気持ちに嘘はなかったと言い切れる。

 けれど、そんな気持ちは内に抱えているだけじゃ自己満足以外の何物でもなく、結局それは何も考えていないことと同じなんだと知った。自己満足では人を助けることなんて不可能。

 情けなかった。俺は何度もアイツに助けられてきたのに。

 母親のいない俺は、昔両親と手をつないで楽しそうにしている同じ年頃の子供を見るたび寂しい思いをした。毎年行われる体育祭で母親の手作り弁当を持ってきている同級生が羨ましかった。父さんは飲食店を何店か出店した経営者で自らも現場の厨房に入り人に指導などしているから料理が上手くて、父さんが持ってくる弁当はクラスの皆にすごいと褒められたし羨ましがられた。たしかにおいしいし盛り付け方も他の子の弁当より凝っていてきれいだと思う。でも満足はできなかった。

 母親がいるってどんな感じなんだろう?

 皆、家では母親と何を話すのかな?

 学校でそんなことを言ったらからかわれそうだと小学生ながらに思い、外では明るく元気なフリをした。時々母親がいなくてかわいそうだと言われても「まあ、いないものはしょうがないし」と自然な感じで平気そうに言ってみせたりした。

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