拗らせ女子に 王子様の口づけを


5分前に駅に着いた。
キョロキョロ秦野さんを探すと、彼女はすでに着いていて慌てて駆け寄った。

「すみません、お待たせして」

携帯を触りながら柱に凭れて立っていた秦野さんは、私の声でハッと顔をあげてふわりと笑ってくれた。

「いえいえ。私も今来たとこです」

この前奏ちゃんと出来なかったカレカノみたいなやりとりをして、思わずクスリと笑みが漏れる。


「どうします?何処かお店考えてます?」

この近くだと『まる太』くらいしか思い付かない。
うーん。
会社の人も多そうだしなぁ。

そう考えていると、近くに秦野さんのオススメのお店があるらしくそこに行くことにした。


たわいもない話をしながら10分ほど歩くと一見お店だとは分からないビルの倉庫みたいなところに着いた。
首をかしげながら秦野さんが笑いながらドアを開けると中は程よい暗さで丸いテーブルが均等に配置されていた。
イメージ的にはアメリカの西部映画に出てきそうな居酒屋だ。

うわぁ。
と、思わず声が出て目をキラキラさせる。

直ぐに来た店員さんに案内されて1つのテーブルにつく。
思わずキョロキョロしておのぼりさんのようだ。

「は、秦野さん。こんなお店初めて来ました。なんか雰囲気ありますね!」

「フフフフフ。中身はね普通の居酒屋なのよ?でも何食べても美味しいから好きなもの頼みましょう」

メニューをみると、本当だ。見慣れたメニューが一杯。
これなら頼みやすいかも。

< 106 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop