2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- other side Five --**



「直貴」


囁くようにそう言って、ヒデは俺の腰のあたりをポンと叩いて俺を1歩前へ出した。


振り返ると、雪ちゃんは小峯栞のコートとバッグを無言で俺に突き出していた。


それは“栞ちゃんについていてあげて”という、雪ちゃんの精一杯の行動だった。


ヒデは俺の目を力強く真っすぐに見て、その目の力から“ここから離れろ、あとのことは俺たちがなんとかするから”と言っているように思えた。


俺は、雪ちゃんからコートとバッグを預かり、ヒデに“分かった”と頷いた。


そして、肩を震わせて泣いている小峯栞に頭がすっぽり隠れるくらい深くコートをかけた。


小峯栞は、俺が見た3度の涙とは比べものにならないくらいたくさん涙を流していた。


俺は小峯栞をなんとか立たせ、左腕で肩を抱いて、右腕で腹のあたりを支えて、ヒデたちに見送られながら店から離れていった。


こんなことしかできない自分が、好きな人すら傷や涙から守れなかった自分が、情けなくて歯がゆかった……。
 

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