しかし兵器は少女である
すべては閑話に過ぎない
目覚めた朝は晴れていて、血や生物の重みなど一切感じないというのに、手触りのない陽光こそが、あたたかかった。

なぜかわからない。

ただ、初めて空の広さを目の当たりにし、その大きさに飲み込まれた時のように、空を見つめた。

見つめては、あたたかさに体の節々が柔らかくなり、私は中庭、目を閉じて棒立ちしていた。

――ところへ、

「?」

殺気とは違う、しかし、熱視線を感じた。

左側、生け垣のアーチを越えた、バラの茂みの、根本。

なにか、いる。こちらを、見ている。

なんだ?

威圧感も存在感も空間へ押し出してこないのに、たしかにそこにいるというのを認識させる、なにもの。

「出て、こい」

と、言ったのがよかったか悪かったか、

「! 待て!!」

あれほど注がれていた眼差しが、あっさりと外された。

気配が突然、どこかへと疾走を始める。

私はつい、追いかけていた。
< 1 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop