苦しくて、愛おしくて




────────カシャカシャ。


「学校でからかわれても知らないよ」


カメラの視線に応えていた凛は、私の言葉にゆるり、と視線を重ね合わせてきた。


「いーよ。別に俺は部外者になに言われたって」


凛は、私と真逆だね。

私は何も知らない他人だからこそ、何も言われたくないよ。

だって根も葉もない噂って案外簡単にたつことを、私はもう嫌って程知っているもん。


「あーあ、奈央全然こっち向かないから2人で正面向いてる写真撮れなかったじゃない」

「いいよ今更写真とか。てか遅刻する!」


新学期早々の遅刻はさすがに恥ずかしい。

私は地べたに置いておいたスクバを掴むと、急いで自転車のカゴに突っ込んだ。


「はいはい。2人とも気をつけていってらっしゃい」


お母さんは終始嬉しそうな表情を浮かべているけれど、こっちはなんだか複雑。


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