苦しくて、愛おしくて




え。


「りん?」

「…」

「…」


呼びかけにも反応してもらえず、いよいよ怖くなってきたとき。


急に上から何かが降ってきて、視界を一瞬遮った。


「ぶ、っ」

「帰る」


クッションを顔面に落として部屋を出ていった凛。

そしてすぐに聞こえてくる
階段を駆け下りていく足音。



初めて自由になった身体を前に、私は依然としてLEDライトを見上げるばかりだった。


クッションをそのまま両手で顔面に押し付ける。



なに、今の。
一体なんだったの。

見たことない、あんな凛。


怒って?いるような、でも苦しそうな、堪えているような。


複雑な感情を絡め持った表情に
私はなんだか置いてけぼりを感じた。



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