苦しくて、愛おしくて



──────ガチャ。


「うゔー寒っ」

あまりの寒さに身体がぶるりと震える。

マフラー巻いてきて正解だ。


「それこっちの台詞なんだけど」

先に出ていた凛はいつもの冷めた目で、駆け寄る私を迎える。


「あれ? なんか凛背伸びた?」


こんなに凛のこと見上げてたっけか。

凛は首をかしげる私を「ふっ」と鼻であしらう。

「奈央が縮んだんじゃない?」

「はあー? そんなの
願ったり叶ったりなんですけど?」


163センチと女子の平均より高めなこの身長は、私にとってコンプレックスの一つだ。

小さくて可愛らしい子の隣に並ぶと、特にそう思う。


遥は逆に私よりも3センチ高いから、二人で並んでも凸凹しなくて、ちょうどいい感じだ。



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