苦しくて、愛おしくて



「明日だね、入試。緊張してる?」

ゴロン、と身体を凛に向ける。


「人並みにはな」

あれ、やけに素直じゃん。

「へえー、意外。『全然してねぇよ』とか言って強がるのかと思ってた」

「…」

夜空ばっか見ていた視線が
身体ごと私に向けられる。


「俺今年の目標「梟盧一擲」って決めたから。だから強がるのもやめた」

「きょうろいってき?? なにそれ」

「教えない」


なんだか最近、凛は肝心なことなにも教えてくれなくなったね。

秘密ばっか増やされるのは、普通に寂しいんデスガ。


「強がるのをやめたら、それは叶うの?」


私の問いかけに、凛はフッと息を漏らすように笑う。




「それは逆に、俺が聞きたい」




やっぱり最近の凛は、よく分からない。




< 95 / 113 >

この作品をシェア

pagetop