愛は尊い


まだ午前中なのに
陽が沈んでいるように見える
周りの声が遠くに聞こえる


私の頭の中は
やはり家族のこと


あのあと、どうなったのか…
双子の弟…奏太と啓太のこと、
そして何より両親の事だ


なぜ私だけ外に出されたのか
知りたいけど、それ以上に家族が心配
いつの間にか走り出していた私
見覚えがあるピアノ教室の看板

ここを右に曲がって
突き当たりをまた右に曲がれば…


『…あった!』



何度か来た事ある…昔の記憶が
鮮明に思い出された
フェンスに囲まれた庭
ここでバーベキューをした記憶

田野さんの奥さんが
あの時、植えたばかりなのと言っていた
葡萄の木はツルが伸び絡んで
毎年豊作を表していた


シーン、と静まり返った田野さん家
もしかしたらいないのかもしれない
それでも私はボタンを押した


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