クールな御曹司と愛され政略結婚
このふたりが夫婦…夫婦…。

言われてみればそう見えなくもないかも…と目を細めて眺めていると、視線に気づいた姉が我が物顔で、一樹先輩のマティーニからオリーブを取って食べた。



「唯子がさあ、一樹のこと『人生なめた感じの小僧』って言ってたよ」

「ほんとに? 当たってるけど、唯子ちゃんにそう思われてたとはなあ」

「違…それ言ってたの、お姉ちゃんだし!」

「さすが私の妹だけあって、鋭いよな」

「欲しかったなあー、でも完全に振られちゃった」



思えば先輩の誘いに乗ってゼロに言っていたら、姉とも関係者になっていたということか。

危なかった、と胸をなで下ろし、隣で石になっている灯の膝を叩いた。



「大丈夫?」

「ん…うん」

「"すごい男"って、一樹先輩だったんだね」

「要子を駆け落ちに走らせるんだもんなあ…」



いったいどんな情熱的な恋愛をしていたのか。

しかし姉は、「違うよ」とくわえた煙草を上下に揺らした。



「駆け落ちしたわけじゃないよ、適当な理由をつけて家出した後で、たまたま一樹に再会したんだ」

「えっ、そうなの」

「まあ、すぐ結婚したから、結果的には駆け落ちとたいして変わらないかもね」

「海堂のほうの親とは? どんな関係なんだ?」

「再会したとき、俺も要子とまったく同じ境遇で、自主勘当状態だったんだ。15歳の子と勝手に婚約させられてさあ。どこの後進国だよって思わない? 親父と仲人の叔父ぶん殴ってそのまま行方くらました」

「親っていきなりそういう、理解に苦しむことするよなー」

「なー。でもそろそろ仲直りしなきゃ。要子にも苦労かけるかもだけど」

「いいよ、一緒に殴られるくらい、してやるよ」

「ほんと愛してるよ、マジで」

「私もだよ」



軽くとはいえ、気持ちの入ったキスを見せつけられ、私と灯は完全に固まった。

なんていうか、身内のラブシーンに戸惑うというよりは…。
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