【短編集】その玉手箱は食べれません


「公園で毎朝犬の散歩をさせている人が、SLの近くにピンク色のチョークが落ちていることに気づいた。3本が直線状に並び、先端から傘のように2本のチョークが広がって矢印の形を成してSLの方向を指していた」


 マスターの話に浸透していたウエイトレスは両手を握った。


「見るとSL後部の石炭庫の黒い側面に上向きの矢印が記されていた。もちろんピンク色のチョークでね。犬を散歩させていた人は柵を越えて矢印のとおりにSLの石炭庫の上に登ったんだ。上にも矢印が書いてあって鎖と南京錠で閉めてある丸いマンホールのような蓋のところに“ココあけて!”と指示めいたものが書いてあった。チョークで書かれていた文字を擦るとあっさり粉が指についた。書いて間もないってことになる。犬を散歩させていた人は気味悪くなって管理元である町の住民課に連絡した」
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