【短編集】その玉手箱は食べれません


 その日はなにか変だった。


 よくよく考えてみると嫌なことが起こる予感はしていた。


 会社帰り、コンビニで弁当を買って外に出ると空が瞬く間に真っ黒。


「鳥だ」と天を指差す子供のひと言で怪奇現象の原因がすぐに解明されたが、あらゆる鳥が種族を超え、北から南へ一斉に空を横切り黒く染める様子は異様だった。


 しかも何かに追われるように命尽きる覚悟でまっしぐらに飛ぶ鳥たちの姿は、家路を急ぐ人達の足を強力な接着剤でもつけたみたいに立ち止まらせる。


「あぁ~気味悪い」

 おれは空を見上げながら思わず感想をもらした。




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