【短編集】その玉手箱は食べれません


 そして、操作パネルの“地下”のボタンを押す。

 おれ様は地下が苦手だ。


1……B1……B2……B3……B4……B5


 地上から数秒の移動距離しかないが、地下の雰囲気は一変し、 扉を開けれるとムツとするような熱が襲ってくる。


「おい、早くしろ!あと5分で火を落としちまうぞ」

 煤で頬を黒くした男が冗談半分で急かす。


 火葬場となっている地下で笑うことができるのは、この世でその男だけだった。


 自殺者が他国からも押し寄せるようになったこの国で彼の仕事が絶えることはない。

       <了>
           第十一話へ

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