【短編集】その玉手箱は食べれません


 後藤の右足は水たまりに引きずり込まれ、階段を踏みはずしたような体勢のまま沈んでいく。


 チャポンと水面が鳴っただけで叫び声など聞こえてこなかった。


 明日から平和になるな。


 ぼくは水たまりの使い道を知った。


 それから数週間後、久々に父親が帰ってきた。


 母親は目を合わせた瞬間びっくりした顔をしたが、その後は無視を貫きとおした。
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