【短編集】その玉手箱は食べれません


 一年後、夏の暑い日にけたたましく我が家の電話が鳴った。


「はい、梶山です」


「あ、私」

 明らかに娘の声だった。


「どうした?」


「どうしたはないでしょう。娘が一年ぶりに声を聞かせてあげようと思ったのに……」


「元気にしてるのか?」


「まぁね」
< 34 / 197 >

この作品をシェア

pagetop