【短編集】その玉手箱は食べれません


 呼吸を合わせ、3……2……1とカウントダウン。


 銃声が響いたのは1発だけ。


 店を出たおれは筋肉を隆起させ、ガルルッと唸るとコートを引き裂き、赤褐色の体毛をさらけ出す。顎が伸びて醜い乱杭歯から粘りのある涎を滴り落とした。


 遠吠えをして満月に勝利を告げる。


 おれの名はシルバー・ブレッド。


 仲間から恐れられる名前をわざとつけ、孤独をこよなく愛する一匹狼……いや一匹の狼男。

       <了>
            第六話へ

< 69 / 197 >

この作品をシェア

pagetop