【短編集】その玉手箱は食べれません
そして、顔を上げたとき、老人が目の前に立っていた。
冷や汗が額からこぼれ落ちてあからさまに罪悪感を露呈した。
「どうやらその筆が気に入ったようだな」
老人は目尻から皺を伸ばした。
「す、すいません。黙って使ってしまって……か、かえします」
私がしどろもどろに謝りながら筆を返そうとすると老人は皺だらけの手のひらを突き出した。
「その筆を君が拾ったのもなにかの運命だ。プレゼントするよ」