思い出す方法を教えてよ
目覚めと忘却
「もう!びっくりしたんだからね!」

怒った様子で私を見つめるのは、幼馴染の島崎藍(しまざき あい)。幼稚園から高校までずっと一緒の親友だ。
帰り道で階段を踏み外した私は、しばらく目覚めなかったらしい。目を開けたら病室にいて、お母さんが泣きそうな顔で私をのぞきこんでいた。
私が意識を取り戻したことを聞いた藍は、学校が終わってすぐにお見舞いに来てくれた。

「幼馴染2人が階段踏み外して病院に運ばれたなんて、心臓止まるかと思ったじゃん!」

幼稚園から高校まで一緒の幼馴染は藍だけじゃない。間宮夏樹(まみや なつき)もだ。夏樹は親友であり、彼氏でもある。
黙っていたけどずっと好きで、藍に背中を押されて、高校に入ってからやっと告白した。

「一昨日のこともあったし、ほんと心配したんだからね!」
「一昨日?」

私が聞き返すと、藍は変な顔をした。ぱちぱちとまばたきした後で、なんでもないと小さく言う。

「え?なに?気になるじゃん!」
「ううん、なんでもないから」

藍は困った顔で首を横に振るだけだった。一昨日ということは、階段を踏み外した日の前日だけど、何かあっただろうか。

「そうだ!夏樹は?」
「まだ目が覚めないって」
「え……」
「そんな心配そうな顔しないの。理央だって目が覚めたんだし、夏樹ももうすぐだよ」

藍は励ますように笑う。だから、私も心配させないように冗談めかして言った。

「漫画である入れ替わりはなかったみたいだね。頭をぶつけたりして、中身が入れ替わっちゃうっていうのあるじゃん」
「さすがにそんなことは起きないでしょ」
「そうだよね〜」

藍はしばらく話してから、時計を確認して、また明日来るねといって病室から出て行った。
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