思い出す方法を教えてよ
「夏樹、調子はどう?」
「藍!今日も来てくれたんだ」

穏やかに笑う夏樹には変わった様子はなかった。いつも通りの夏樹だ。
いつもと違うのは、私をちらちら見てくること。

「藍、その子は?」

「その子」なんて他人行儀な呼ばれ方をされたのは初めてだった。近所に住んでいて、気付けば3人一緒に遊んでいた。
藍のことは覚えているのに、私のことは忘れてしまったなんて、信じられないし、ショックだった。

「理央だよ。小池理央(こいけ りお)」
「えっと、昨日言ってた……?」

自信なさげに言う夏樹に藍は大きく頷いた。

「なんか、ごめんね。僕、わからなくて」

夏樹は申し訳なさそうに言った。嘘をついてるわけじゃないと思った。優しいところは変わらない。
夏樹が悪いんじゃないってことくらいわかってる。それでも、ショックなものはショックだ。

「僕と藍と幼馴染だったんだよね」
「うん」
「思い出せるといいな、小池さんのこと」

それを聞いてしまったらたまらなかった。だめだとわかっているのに、止められなかった。

「夏樹は、『小池さん』なんて呼ばないっ!」
「え……」
「そんな風に呼ばないでよ!」

私はそのまま病室を飛び出した。看護師さんに走っちゃだめだと注意されるのも無視して、自分の病室まで走った。

「なんで、なんで忘れちゃったの、夏樹」

ベッドに入って顔を枕に押し付ける。目頭が熱くなって、涙が滲んだ。たまらなかった。
なんで、私のことだけ忘れちゃったの?私は夏樹の彼女だったよね?本当にそうだったよね?
今の夏樹は藍にしか笑いかけない。夏樹にとっての幼馴染は藍だけで、私はクラスメイトですらない、知らない人なのだ。
悔しくて、悲しくて、ただただ涙が止まらなかった。
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