恋色流星群


待ち合わせをした、鰻の某名店で。
個室の席に通されて間も無く、航大が入ってきた。


相変わらずのスタイルで。
サンローランのジャケットを身に纏う。

嫌味なほど、隙がない。





「よ。」

『ごちになりまーす♡』

「第一声、それ?笑」


シャネルのサングラスを外して、こちらを見ずに笑いながらおしぼりに手を伸ばす。




『ねぇねぇ、一番高くておっきいの頼んでいい?♡』

「いーよ、俺今日食えるから。」


あまり食べられない体質なのに、食い意地のはった私。いつも、多めに頼んでは残してしまう、悪い癖。

航大は慣れた手つきで、そんな私を甘やかす。

残ってしまっても、今日は自分が食べられるから好きなものを頼めと笑う。






私たちは大好物の鰻を突きながら、他愛もない話を続けた。
天然な航大に笑わせられたし、口の悪い私に航大もよく吹き出した。


「おまえ、小悪魔通り越して悪魔だな。」

航大が苦笑すると、なぜか嬉しかった。



98%のリアルと、2%の緊張。
ここにあるのは、いつも同じ割合。
















お店に向かうため、久しぶりに乗った航大の車。
後部座席で、あくびが止まらない。



「寝とけ。店着いたら起こすから。」

『すぐ着くじゃん・・・。』

「20分は寝れるだろ。」


車の中で流れていた音楽のボリュームが、小さくなる。





「・・・昨日、遅かったのか?」

『うーん・・・昨日は、先輩のお客さんについたから・・・』



飲むのも仕事。
アフターに付き合うのも仕事。
何とも思ってないし、これが私の仕事だから仕方ない。



柔らかい革のシートの感覚と。静かに流れるように進む車の走行。
低く、耳に降る、航大の声。






次に止まった信号で、航大が脱いだジャケットをかけてくれたときには。


私はいつよりもずっと。
静かで心地良すぎる眠りにおちていた。
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