恋色流星群



何度めかの、涙が出るほどの大笑いに。

マスカラ、付けてこなくて正解だったなと目尻を抑えた。


航「髪、食ってる。」


すっと、指先で唇から頬をさらわれる。

隙さえあれば、端々で触れてくる隣の男にも。チョコが全く顔色を変えないから、逆に反応するのが恥ずかしくて。

いつの間にか慣れてしまった。





チ「理沙、まだ食える?」

『何頼むの?』

チ「“雲丹の釜飯”。美味そうじゃない?」

航「頼んで。俺、まだ食えるから。」



航さん、ほんと太んないよねとチョコが目を丸くした。
私は、確かに筋肉だけを上手いこと装飾した背中を思い出した。




呼び鈴でやって来た仲居さんは、若くて。
釜飯とハモの湯引きを告げて「お願いします」と目を合わせたチョコに。

一瞬、驚いたように息を飲んで。

慌てて、その視線を航大に移してまた息を飲んで。

その隣の私に視線をスライドさせて。
これ以上大きくならないであろう瞳を抱えて、小走りに出て行った。



チ「今の子、すごい理沙のこと見てた。」

『なにこの女?って顔でしたね。』

チ「いや、誰か芸能人だと思ったんじゃない?」

『げろー。んなわけないっしょ。』

チ「なんで?理沙は、ほんと綺麗だよ。」

『チョコ、可愛いなぁ♡ひれ酒、もう一杯いただきなさい♡』

チ「やった。笑」




楽しさだけが積もって、更けていく夜。




航「ここは、男の店員がいないからいいな。」


間の抜けた航大のセリフも。


航「理沙が見られて、イライラしなくて済む。」


うっとり、覗き込んでくる瞳も。




既に酔いの回った頭では。
仕方ないなぁ、と思えてしまう。




チ「あー、それすげぇ分かる。けっこう店員の男って、容赦なく盗み見てくるよね。
俺、この前ついに隠したもん。」



鼻の頭にシワを寄せたチョコのしかめっ面が、可愛くて。



航「隠した?!どこに?てかどうやって?
あれ?誰を?!」

チ「航さんには言いたくない。俺、いちおう反省してるし。」

『チョコ、一体何したの・・・
とりあえず、この酔っ払いには絶対言っちゃだめ!』



色づく隣の剛田大に、身の危険を感じて。
慌ててチョコの口を塞ごうと手を伸ばした。

誰の何が面白いのか。

もう分からないけど、私たちはお腹を抱えて笑う。




ため息が出るほど。

安心な、この夜。
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