恋色流星群


確かに、私は。




ある時は

ただ、優しく甘く熱をうつすようなキスも。


ある時は

こみ上げる呼吸を交換して、それで生き存えるような深いキスも。


こんな、ミイラ取りがミイラになるような、自分のヨクジョウを見せつけられるキスも。




航大から与えられて“初めて”、知った。






航大の首から、シャラリと音を立てて。シルバーのネックレスが私の首元に落ちた。

その、冷たい感触に。
そこまで上がっていた体温に、ぼんやりと気づく。




この男が。

いま、無理やり私から取りあげようとしてるのは恐怖と焦りなのかもしれない。



本当は、キスなんて。
行為なんて、どうでもいいのかもしれない。


苦しみを取りあげるために、必死で。
私を私に返すために、必死で。




この、一見暴力的にも見える不器用なやり方が。
この男の、やり方なんだ。
















私のボロボロの泣き顔も。
なんてことないと、手に取った。

私の凝り固まった世界も。
簡単に変えてみせると、言い放った。


きっと、それは簡単なことではないだろうけど。
それでも、この男は本当にそうしてみせるんだろうなと思う。





乱暴と不器用に隠された、私への果てなさを。

本当は、ずっと知ってたのかもしれない。



まだ、最果てまで。たどり着けてはいないけれど。

この人の不器用さも、横暴な仕草も。
受け入れよう、と思う。


この人が、私に。

いつも変わらず、そうするように。














力が、抜けていく。

薄く、瞳を開けたら。

なぜか同じタイミングで開いた瞳は、思っていた以上に濡れていて。




「・・・苦しくねぇ?」


ほんの少し開けた隙間から、さっきの事態を
今頃思い出したように、聞くから。


『苦しいわ。笑
溺れてるみたいだよ。』


わざと似つかわしくなく、戯けて答える。




クスッと、嬉しそうに解ける口元に。
私は、何も、怖くなくなる。


頬をなでる手の平は、やっぱり温かい。

心配、いらない。














「溺れろ。」











顎をすくわれて、息を塞がれて。

恐れた記憶が一つ一つ、甘い痛みで上書きされていく。


また、迎えに来た波のようなヨクジョウに溺れながら。



確信に指先が

触れた、気がした。
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