恋色流星群
 

黙ったままの、直生さん。
怖くて、顔が見れない。

ちぎれそうな身体を奮い立たせて、ヒールの足を外に下ろす。




腰を持ち上げて、頭を下げる_______

直生さんの前を過ぎる、その瞬間。

手首を強く、掴まれた。










「待って。」



初めて知る、その大きな感触が。

私の身体に。
一瞬で、火を点ける。



私の手首を離さないまま。
運転手さんの窓を振り返って、何やら告げる。

タクシーは、直生さんを置いて走り出した。



「ちょっ、あれっ、タクシーっ・・・」

「大丈夫、気が散るから先で待っててもらうだけ。」



少し肌寒い、秋夜の空気。
対照的に、掴まれた皮膚からじりじり熱が上がってきて。
鳴り響く鼓動で、身体が破裂しそう。

もう、どうにかなりそう_____





「期待させるなって、言われたらさ。」


恐る恐る、顔を上げたら。


「こっちのほうが、期待するんだよ。」


射抜くような視線に、身体が固まる。




直感で。
次の言葉は、聞いたらいけない気がした。

耳を塞がなきゃ。
私、壊れるような予感がした。












「俺、瀬名さんが好きです。」






言葉の、意味も。
重みも何もかも取り上げられて。

身体は、痺れるような熱に飲み込まれる。





「全部そのつもりだから。
期待するなら、大いにしてよ。」




意思とは、別に。
視界がぼんやり、滲んでいく。


直生さんの真上に、大きく明るく輝く月。
スポットライトみたいに、私の世界で直生さんだけを照らす。



朝も昼も夜も。

私の世界で輝く人は、この人しかいない。








「ただ、今日教えてほしいんだけど。」

「なんですか・・・」


絞り出した、声ががさがさ。
泣きそう。
もう、本当にこんな自分が嫌。

それなのに、この人は。
こんな私を、好きだと言った。





「瀬名さんにとって、俺って今アリなの?ナシなの?」

「うそ・・・」

「え?」

「分からないん、ですか?」





次の、直生さんの笑顔は。

これまで見た、どれよりも可愛くて。
眩しくて男っぽくて、素敵だった。
















今日のこの景色は、一生忘れない。
どんな夜が、積み重なっても。



私は、今日を忘れない。











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