(仮)センセイに恋の法律相談
1 甲斐法律事務所
「チジョ?」
「ぐっ……ゲホゲホッ」

アイスコーヒーが気道に入って、噎せ返ってしまった。

昼下がりの、街の小さなオープンカフェ。

今年7月、2回目の司法書士試験に見事に落ちた私は、予備校通いの勉強中だ。

講義の後に、同じく予備校通いの彼女、有沢真希(アリサワ マキ)と、すぐ下のこのカフェで課題を済ませて帰るのが日課になっている。
まあ、いつも殆んどの時間をお喋りに費やしてるから、課題全く終わらないんだけどね。

「だって……あんまりじゃない?
 カラダを張った、963回目の告白をよ?いともアッサリとかわすだなんて…」

「イヤ、マッパで告られたら、普通に退くわよ。
 むしろ、霧生先生に感謝すべきだわ…
 スルーしてくれてありがとうってさ」

「ちゃんと青年雑誌とかで勉強したのに……私、スタイルだけには自信あるんだよね、その他は10人並だけどさ」
 
「……いや、そもそも勉強の仕方が間違ってるって。
 ああ、霧生先生がカワイソウ。
 こんなのに、よくマトモに応対してくれてるわよ…って、聞いてるの⁉」

「次は成人誌で研究するかな…」

「それやったら、私あんたの友達やめるよ?」

 テーブルに広げたルーズリーフにかかったコーヒーの飛沫を拭き取っていた私を、マキは低い声で脅した。

 ひゃっ…

 常識人の彼女は、怒らすとスゴく怖いのだ。
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