恋愛じかけの業務外取引



ラブグリで行うフェアは12月1日からだ。

開始まであと10日程度しかなくなり、私はますます忙しい。

そんな中、無事に先日堤さんの家で作ったデザインが承認されたのはよかった。

本当に煮詰まっていたし、あれで通らなかったらいつかのように毎日午前さまになっていただろう。

いくら私が頑丈といっても、頻繁だとさすがに倒れてしまう。

この日、私はフェアについての打ち合わせのため、1号店にやって来た。

ここを訪れるのは菜摘が堤さんを合コンに誘っていたあの日以来なので、少しモヤモヤしている。

「お疲れさまですー」

「あ、山名さん……お疲れさまです」

私はいつもの感じで店舗に入ったのだが、なんだかスタッフの様子がおかしい。

「どうかしたの?」

「あ、いえ。店長なら今、裏で発注の準備やってますよ」

笑顔が硬いし、目を合わせない。

この子はいつも明るくて印象的なのに、やっぱりおかしい。

「そう。ありがとう」

私はにっこり微笑んで、菜摘がいると思われるレジ裏の小さな部屋へと向かった。

――コンコン

「山名です。入っても大丈夫?」

「……どうぞ」

菜摘の返事もいつもと違った。

『どうぞ』とは言ったが、歓迎していない感じが全面に出ていた。

とても入りづらいが、仕事は全うせねばならない。

私はいつもより力を込めて扉を開けた。

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