恋愛じかけの業務外取引
世渡り上手だとは思っていたが、あのだらしなさで案外エリート。
なんだか自分に不相応な人を好きになってしまったような気がする。
これまで後輩とばかり付き合ってきたから、余計にそう感じるのかもしれないが。
私も一応彼と同等の役職である「チーフ」だけど、うちとイズミ商事じゃ会社の規模が違う。
彼が担当している会社はうちだけではないし、毎日遅くまで忙しそうにしている。
彼が家のことをなにもしないのは仕事に全霊を注いでいるため余力がないからであって、きっと本当になにもできないわけではない。
そんな彼を支えるために私がいる……のだと思いたい。
「課長。私これから1号店に行ってきます」
「うん、いってらっしゃい」
「……あと、彼とは別に付き合ってるわけじゃないですからね」
「え、そうなの? なんだ、てっきりそうなんだと思ってた」
今では加害者と被害者……あるいは家政婦と雇い主です。
なんて言えないので、私は曖昧に笑うしかなかった。
1号店に来たのは、先月の撮影の日以来だ。
そのときの雑誌が、早いもので数日前に発売されている。
その反響もあってか、いつもより客足が多い様子。
雑誌に載るのは12月のフェアの宣伝のための特集だったのだが、記事はラブグリーンマーケット自体の広告になる。
こうして実際に店舗を覗くと、自分が関わった仕事に効果があったのだと実感できて嬉しい。