君の瞳を信じて。
【優奈side】
「終わらない…」
くじ作りに苦戦中。なんでこんなこと…
仕方ないか…
「はぁ…」

「なーに、ため息ついてんの」

ん?なんか声がしたような…
ま、私のことじゃないか。他の人に話しかけたんだよね。

「おーい、おーい!無視すんなよ、」

「え!?私?」
どう考えても…私に話しかけてる…?

「そーそー、でっかいため息ついてるなーと思って」
だ、誰。なんで私に話しかけてるの?

「えーっと…私に何か用ですか?」

「あ、くじに苦戦してんのか~。手伝ってやろうか?てか手伝うわ!」
こ、この人…人の話を全然聞いてない…
って、くじ作ってるし!

「な、何!?勝手にしないで!私の仕事なんだから…ていうか、何か用事があって図書室に来たんじゃないの?」
ちょっとキレ気味な私。だってしつこいし…ほんと、こういうの苦手。

「用事っつーか…合コンの誘いから逃げてきた☆」

「は?」

「君も何かに逃げてきたんじゃない?そんな瞳してるよ」

「え…」
くじを作りに来たのは事実だけど…私の心は、心奈から逃げてきたのかも…

「その顔、図星だね」
「は?」
いつの間にか敬語も取れてるけどもういい。この人は何を言っても聞かないわ。

「くじ、手伝うから」

「だから~……ま、いっか…」
そのほうが早く終わるしね。こいつだけ特別。それにこいつ、適当そうでなかなか丁寧。

「お前、名前何て言うの?」

「私?私は、華野優奈」
誰かが私に名前を聞くなんて…いつもは心奈が聞かれて、私はついでだしね。

「あー!あの双子の片割れか!優奈ね、わかった」

「ゆ、優奈!?」

「仕方ないだろ、双子なんだし」
そっか…でも、男の人に名前で呼ばれるなんて、初めてかも。クラスの人にも、私は ”華野さん” 心奈が ”ここ” だしね… 

「それに俺らもう友達だし、遠慮はいらないだろ☆」
は…友達への展開早すぎ。チャラい方なのかしらね…

「わ、わかったよ…で?あんたは?」

「俺は藤田航。お前も航って呼べよ!俺も優奈って呼ぶし…なんせ友達だからな☆」

「は、はあ…」
私は学んだよ。こいつに何を言ってもかなわないってさ。

「お、もうそろそろ完成するから。あとちょっと頑張ろー」

「うん!」

こいつ…じゃなくて航、のおかげで、くじ作りは見事完成した。

「こ、航…?」

「ん?」

「あ、ありがとう…」
こんなに素直にお礼を言ったの、いつぶりなんだろう。

「いいって!俺ら、友達だろ!」

「うん…!」

航にだけは心を許せる…
こんなの初めてだった。
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