声にできない“アイシテル”
6章 重なる想い

狂わされるペース

「ねぇ、桜井君」

 ある日、教室に入って早々声をかけられた。

 松本だった。


「桜井君がデートするなら、どこに行きたい?」


「は?」

 思いっきり眉をしかめる俺。


「ファンクラブの子達が知りたいんだって」

「彼女もいないのに、デートなんかするわけないだろ」


 いらいらと歩き出すと、彼女はしつこくついてきた。

「じゃぁ、どんな女の子がタイプ?」

「うるせぇな」


 くるっと振り返ってにらみつける。

 それでも松本はひるまない。


「だって、ファンクラブの会長としていろいろ情報がほしいんだもん」

「俺は“ご自由に”とは言ったけど、協力するなんて一言も口にしてない」



 感情無く言い捨てて、俺は自分の席に着いた。


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