声にできない“アイシテル”
 俺に気がついた彼女は軽く頭を下げて立ち去ろうとするのに、友達のほうは止まってじっくり俺を見ている。

 そして

「やっぱりかっこいいね。
 はちまき、交換してくれないかな?」

 と、コソコソと話している。



―――またか・・・。


 俺は周りには分からないようにムッとしたのに。

 どうやらあの子は気が付いたらしく、友達の袖口を引っ張って“早く行こう”と急かす。

 それでも、その友達は動こうとしない。


 俺はその視線から逃げるように、その場を後にした。






―――あの子に『カッコいい』って言われてもイライラしなかったのになぁ。



 何でだろうと首を傾げていると、午後の授業開始10分前の予鈴がなった。




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