声にできない“アイシテル”
 今井さんからの情報をもとに、チカを見かけたというあたりで聞き込みをする。

 日本人が少ないこの地域では、チカの存在は目立っていたようだ。

 思っていたよりも早く、チカが住むアパートを突き止めることが出来た。


 教えられた場所をさっそく訪ねる。

―――この扉の向こうに、チカがいる。

 そう考えるだけで、涙が出そうだ。


 震える指でベルを押した。


 すると、聞こえてきたのは優しそうな女性の声。

『Hello?』


―――え?

 チカは話せないはず。

 驚いて、思考が一瞬止まる。


 でも、すぐに思い直す。


 外国ではルームシェアが当然のように行われているという。

 無駄な家賃を払わないで済むこの手段を、チカがとってもおかしくない。


 俺はインターフォンに向って自分の名前と、日本からチカに会いに来たことを英語で伝えた。


『うそ?
 チカちゃんの知り合い!?』


 ひっくり返った声の日本語が流れた後、バタバタと近づいてくる足音。

 せわしなくドアチェーンが外され、勢いよく扉が開いた。
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